口腔機能発達不全症
目次
口腔機能発達不全症とは

口腔機能発達不全症とは
むし歯を経験したことのある小学生は年々減少してきていますが、一方で唇を閉じることが苦手な児童が増えており、口呼吸をしている児童は約30%ほど存在していることが報告されています。
このため、平成30年から日本歯科医学会は「口腔機能発達不全症」を疾患名として設定しました。これにより、こどもの口の働きを支援する治療や訓練が歯科医院で行われるようになっています。
口腔機能発達不全症とは、「食べる機能」、「話す機能」、「その他の機能」が十分に発達していないか、正常に機能獲得ができておらず、明らかな原因となる疾患がなく、お口の機能発達において専門的な関与が必要な状態のことをいいます。
口腔機能発達不全症の主な症状
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「食べる」機能発達不全
- 食べようとしない
- 噛まない
- 飲み込めない
- 詰め込み食べ
- くちゃくちゃ食べ
- 丸のみする
- 偏食
「話す」機能発達不全
- 口周りの筋肉をうまく使えない
- 発音が不明瞭である
- 何もしていないときに口がぽかんと開いている
「呼吸」機能発達不全
- ポカンと口を開けている
- 鼻が詰まっていないのにいびきをかいている
- くちびるが荒れやすい
- かぜ、アレルギーを起こしやすい
- 口臭がでやすい
症状が当てはまったら…
乳幼児期から学齢期にかけて、適切な口腔機能が獲得されていることは、顎顔面やお口の成長発育にも影響します。
0歳〜18歳までの各成長のステージにおいて正常な状態も変化します。
それぞれのステージで機能の発達が遅れているか、誤った機能の獲得があれば、原因を探り、修正や回復を早い段階で行うことが大切です。
口腔機能発達不全症対応の流れ
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Flow01口腔機能発達不全症の評価・診断
問診、視診、触診、写真・動画撮影、検査により機能評価・診断を行ます。
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Flow02各成長ステージにおける適正な口腔発達について説明・指導
食べる機能
食べ物を認識して、口に運び、噛み、舌で丸めて飲み込むという一連の流れがうまくいかない原因が、お口の中にあるかもしれません。哺乳量や食べる量、回数にばらつきがあったり、偏食で同じものだけを食べたり、あるいは少食で体重が増えない、食べるのに時間が長くかかるなどの問題は、飲み込む機能、大きな虫歯、口の乾燥などが原因となることがあります。これらを改善するため、治療していきます。
話す機能
正しい発音は、一般的には5〜6歳頃に完成すると言われています。正しく発音できない(たとえば、「サ」が「タ」になる)場合は、歯科、耳鼻科、両方の目線で原因の診査と支援が必要な場合があります。
もしかすると、舌や唇をうまく動かせていないかもしれません。唇・舌・頬の筋肉の力不足や不調和、形態異常などによって生じている場合はお口の筋機能トレーニングや発音の練習を行ったり、必要な場合は外科処置を検討します。
呼吸機能
鼻呼吸は、身体にとって最も適切な呼吸方法です。吸った息が鼻腔を通ることで、湿り気のある暖かい空気となって肺に届けられます。
鼻づまり、口呼吸、扁桃肥大などは、いびき、睡眠時無呼吸症候群の発症に関与している場合があります。さらに、歯並びに悪影響を与えることがあります。治療では、お口の筋機能トレーニング、必要な場合は矯正治療を検討します。 -
Flow033ヶ月ごとに写真・動画撮影、再評価
3か月ごとに写真や動画撮影を行います。また、年齢や必要に応じて唇や舌の機能検査を行い、改善点や今後の課題を分析してトレーニング内容を更新していきます。
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Flow04口腔機能発達の改善
再評価の結果、お口の機能が改善していれば、トレーニングを終了します。
当院の口腔機能発達支援プログラム
運動発達支援
お口の機能を育むためには、姿勢や運動発達の成長が欠かせません。
当院では、お口の発達支援だけではなく、運動発達の支援を合わせて行うことが重要と考え、以下の運動発達支援プログラムも提供しています。
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シェルハブメソッド
シェルハブ・メソッドとは、子どもの自然な運動発達を見守り、後押しする新しい手法です。
赤ちゃんは、生まれてから様々なことを自分で体を動かすことを通して学びます。
赤ちゃん自身の学ぶ力を信じ、見守ることを前提とした上で、お子さんに働きかけ、お子さんがやりたいことができるような手助けをします。赤ちゃんに働きかけるだけでなく、おうちでご両親にやっていただけることもお伝えしています。
※ 当院にはシェルハブメソッド国際公認指導士が在籍しています。 -
体軸体操
体軸体操とは、子どもの運動神経の発達の土台となる「正しい身体の使い方」を身につけることのできる予防医学に基づいて構築された健康的な身体づくりのための体操プログラムです。
特徴は、クロスポイント(人体のスイッチ)と呼ばれる、全身に14カ所あるポイントに触りながら、部分ごと身体を動かしていきます。
※ 当院には体軸ファシリテーターが在籍しています。 -
キッズバランスボール教室
良い姿勢を維持することが難しく、猫背や反り腰の姿勢になる子どもたちが多いですが、この姿勢では肺がつぶれて呼吸がしにくくなります。
呼吸が浅いとお口の健康だけでなく、自律神経のバランスが崩れてリラックスできずイライラしやすい、眠りが浅いなど心身の健康に影響します。
バランスボールは、手軽に有酸素運動ができ、インナーマッスルを鍛えて歪みを解消する運動です。
当院で開催しているキッズバランスボール教室では、スペースが許す限り、親御さんも一緒に見たり弾んだりしながら学んで頂いてます。
※ 体力メンテナンス協会認定インストラクターの先生に直接ご指導頂いています。
食育支援
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離乳食支援、偏食支援
飲んだり食べたりする能力は、本能的にできることではなく、3歳頃までに学んで獲得する技能です。
みる → におう → 触る → お口に運ぶ → お口に取り込む → 咀嚼する → 味わう → 飲み込む といったたくさんのステップを学び獲得していく必要があります。
そして、学ぶためには安心・安全の場であることが大切です。
それぞれの生活環境をお伺いしながら、親御さんの役割、お子さんが自ら選択できること、それぞれの成長過程におけるポイントをお伝えして食支援を行っています。※当院には子ども摂食エキスパートアドバイザーが在籍しています。
口腔機能支援
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歯医者さんdeヴォイトレ教室
遊びや歌などを楽しみながら、「食べる」「話す」「呼吸」など生きるために欠かせない口腔機能を育てることを目的にした教室です。
毎月1回水曜日の午後に開催しています。
※ 口腔機能支援に関わる様々な資格を持つ歯科医師、ヴォイスクリエイター、保育士の3つの専門家が連携して幼児期の口腔機能発達支援を行っています。 -
筋機能トレーニング
〇遊呼吸に関わるトレーニング
あいうべ体操、口を閉じて軽い運動をするなど
〇くちびるのトレーニング
くちびるのストレッチ・マッサージ、リップポップ、あいうべ体操、風船など
〇舌のトレーニング
舌はがし、べろまわし、あいうべ体操、スポット、ポッピングなど
〇飲み込むトレーニング
ガムトレーニング、ストロートレーニングなどお子さんと一緒に、お口の機能の勉強と、お口の周りの筋機能を育てるためのトレーニングを月1回の頻度で行っています。
※ 当院には口腔機能支援士が在籍しています。
当院スタッフが取得している資格

- 口腔機能支援士
- シェルハブメソッド国際公認指導士
- 子ども摂食エキスパートアドバイザー
- 息育士
- 口育士
- 体軸ファシリテーター